ベテラン会計士のブログ
ヤフー事件
平成26年3月に法人税法第132条の2の適用が初めて認められた判決が出ました。
法人税法132条の2は、組織再編税制にかかる行為計算の否認規定で、今回の判決は、組織再編において租税回避行為が認められた初めての事例です。
これは、税務に携わる専門家のみならず、企業のM&A担当者も今後かなり注意しなくてはならない重要な判決といえます(現在、控訴中のため、今後の動向にも注意が必要ですが)。
この事例は、2つの大きな争点がありましたが、ここではその内の一つに絞って記述します。
その一つとは、特定資本関係(現行法では支配関係)が生じる前にヤフーの社長がS社の副社長に就任したタイミングについての議論です。
これは、形式的にはみなし共同事業要件(法人税法施行令112条第7項)をクリアしていました。
しかし、判旨では、みなし共同事業要件の一つである役員継続要件(同条同項第5号)に疑義があるということです。
合併前に被合併会社の副社長に就任した合併会社の社長なのですが、合併前は、副社長としての活動期間が短く(就任:平成20年12月・合併:平成21年3月)、実態としてS社固有の業務に関与していたとはいえないため、同条の趣旨・目的に反するとして、同法132条の2に該当すると結論づけています。
みなし共同事業要件の制度趣旨は、組織再編前と後で移転資産の支配が継続していれば、その継続性を加味し、課税関係は生じさせない、とするものです。基本的にこの趣旨に基づいて詳細に制度化されています。
立法担当者の方の話しからすると、課税要件を詳細に決めたが故に、租税回避行為が想定されるので、132条の2を立法したそうです。
では、我々は、今後どのような対策を講じれば良いのでしょうか?
それは、こういった行為を行う際には、事前に制度趣旨・目的を意識し、どうすれば実態も要件をクリアできるかを吟味し、その証拠をしっかりと固めることなのでしょうね。
「条文に書いてあるから、大丈夫」は通用しない、ということを肝に銘じ、お客様が面倒だと思っても徹底した証拠作りを行うよう注意しなければならないと思うそんな判決でした。