ベテラン会計士のブログ

ストレスチェック制度から不正を考える

こんにちは。公認会計士の間です。

今年の12月1日からストレスチェック制度が始まります。マイナンバー制度の陰に隠れてしまい、マスコミでもあまり取り上げられないので、ご存知ない方も多いかもしれませんね。

ストレスチェック制度とは、定期的に労働者のストレスの状況について、医師、保健師等が検査・評価を行ってストレス要因を評価し、職場環境の改善につなげようという制度です。高ストレスと評価された労働者は、本人が希望すれば事業者は面接指導を行い、必要に応じて就業上の措置を講じなければなりません。このストレスチェック制度は従業員50人以上の事業者に義務付けられています。

さてこの制度、職場のストレス要因を取り除き、労働者のメンタルヘルスを改善するという意味で、一見して労働者のためだけの制度と捉えられがちです。しかし、ストレス要因が取り除かれて職場環境が改善されれば、組織の雰囲気も良くなりますし、働く人のモチベーションが向上して売上アップにも繋がるでしょう。見方を変えれば、事業者にとっても意味のある制度であると思います。ひょっとしたら不正の防止にも役立つかもしれません。

「不正のトライアングル」という言葉があります。

人は、不正行為をやろうと思えばいつでもできる環境にあり(機会)、自分の欲望や悩みを解決するためには不正行為を行うしかないと考えており(動機)、不正を行う自分に都合のよい言い訳をこじ付けられる(正当化)時に、不正行為に手を染めてしまうという考え方です。

ストレスが減って、社内コミュニケーションが活発になり、組織風土が風通し良くなれば、それが不正の「動機」や「機会」の減少に繋がる可能性はあります。

ともすれば、不正をルールの厳格化やシステム化で抑え込もうとするきらいがあります。しかし残念なことに、東芝不正会計事件、VW排ガス不正事件、マンション杭打データ改ざん事件等々、現在も不正行為は後を絶ちません。どんなに優れた制度を作っても、いくらルールを厳しくしても、それを守らない人間がいる限り不正を完全に防ぐことはできませんよね。

組織メンバーのメンタルヘルスケアを通じた人的リスクコントロールとでも呼ぶのでしょうか。制度や組織の外面からではなく、メンバーの内面から不正の芽を摘むという視点(アプローチ)は、意外にも、今まであまり議論されてこなかったように思います。ストレスチェック制度はそもそも不正発見・防止の制度ではありませんし、それだけで不正を防止できるとは決して思いませんが、案外、不正対策の1つの方向性を示しているのかもしれません。


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