でんた丸ブログ

契約にリースが含まれているか否か(その1)

今回は、資産が介在するサービス契約にリースが含まれているか否かを具体例で検討します。なお、リースの判定前なので、「借手」ではなく「顧客」、「貸手」ではなく「サプライヤー」という用語を用います。詳細は、ASBJが公表している設例をご覧ください。

【具体例1】
・顧客A社は、5年間にわたり所定の数量の物品を所定の日程で輸送するサービス提供を、貨物輸送業者であるサプライヤーB社に依頼する契約を締結した。この輸送量は、A社が5年間にわたり10両の鉄道車両を使用することに相当するが、当該契約では使用する鉄道車両の種類のみが指定されている。
・B社は、自らが所有する鉄道車両の中から、輸送する物品の日程及び内容に応じて使用する鉄道車両を決定する。

(規範定立)
適用指針第6項によれば、資産が契約上明記されていたとしても、サプライヤーが、①使用期間全体を通じて資産を他の資産に代替する実質上の能力を有し、かつ、②資産を代替する権利の行使により経済的利益を享受する場合には、当該資産は「特定された資産」に該当せず、当該契約にはリースが含まれないことになります。

(当てはめ)
本件では、➀B社は、複数の鉄道車両を有しており、A社の承認なしに鉄道車両を入れ替えることができるため、B社は、使用期間全体を通じて資産を他の資産に代替する実質上の能力を有しています。また、➁B社は、業務の効率化の観点から、鉄道車両を他の鉄道車両に代替することから生じる経済的利益を、そうすることから生じるコストを上回るよう、どの鉄道車両を使用するかを決定することができ、鉄道車両を代替する権利の行使により経済的利益を享受しているといえます。

(結論)
以上から、当該契約において資産は特定されておらず、リースは含まれていないと判断されます。

リースの定義と識別

今後、新リース会計基準について各論を述べていきますが、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」を「会計基準」、企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」を「適用指針」と略します。

リースの定義:原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分(会計基準第6項)

「契約の締結時に、契約の当事者は、当該契約がリースを含むか否かを判断する」(会計基準第25項)とされ、リースの識別が求められます。この識別にあたっては、①資産が特定され、かつ、②特定された資産の使用を支配する権利を移転する場合に、契約はリースを含むことになります(同基準第26項)。

上記➁については、顧客が以下の(1)及び(2)をいずれも満たす場合に、顧客に「特定された資産の使用を支配する権利」が移転しているといえます(適用指針第5項)。

(1)顧客が、特定された資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有している。

(2)顧客が、特定された資産の使用を指図する権利を有している。

※ リースの判定前なので、「借手」ではなく「顧客」となっています。

このように、リースや賃貸借以外の契約形態で例えば、資産が介在するサービス契約のなかに、新たにリース会計の対象となるものがないかを検討する必要があります。具体例は次回ご紹介します。

リース会計基準の国際比較

今回はIFRSと米国基準に焦点を当てて、リース会計基準の国際比較をします。

・国際会計基準審議会(IASB):2016年1月に国際財務報告基準(IFRS)第16号「リース」を公表。

・米国財務会計基準審議会(FASB):2016年2月にFASB Accounting Standards Codification(FASBによる会計基準のコード化体系)のTopic 842「リース」を公表。

両基準ともに使用権モデル(原資産の引渡しにより借手に支配が移転した使用権部分に係る資産である使用権資産と、当該移転に伴う負債であるリース負債を計上します。)を採用していますが、借手の会計処理に関しては主に費用配分の方法が次のように異なっています。

IFRS第16号:リースがファイナンス・リースであるかオペレーティング・リースであるかにかかわらず、使用権資産に係る減価償却費及びリース負債に係る利息相当額を計上する単一の会計処理モデルを採用。

※ 日本の新リース会計基準も、この単一の会計処理モデルを採用しました。

Topic 842オペレーティング・リースでは通常、均等な単一のリース費用を認識する一方で、ファイナンス・リースでは減価償却費と金利費用を別個に認識するという2区分の会計処理モデルを採用。

Topic 842ではオペレーティング・リースを、均等なリース料と引き換えにリース期間にわたって原資産に毎期均等にアクセスする経済的便益を享受するものと捉えています。

新リース会計基準の影響

新リース会計基準が採用した使用権モデルの下では、原則として使用権資産とリース負債がオンバランスされるところ、これらの内容の詳細については今後解説していきます。

まずは新リース会計基準の適用の影響について、一覧してみます。

(1)借手はオペレーティング・リース(これまでは通常、均等な単一のリース費用を認識してきました。)についても、使用権資産とリース負債を計上した上で、その後、営業費用の区分で減価償却費を、営業外費用の区分で支払利息を別個に認識することになります。このことにより次のような影響が生じてきます。

①仕訳の増加と、それへのシステム対応

②営業外費用たる支払利息を別個に認識することによる、営業利益やEBITDAの上昇

③利息相当額の総額を借手のリース期間中の各期にわたり定額で配分する場合でなく、利息相当額を利息法で会計処理する場合には、支払利息の認識が前加重(前倒し)となるため、リース期間の後半より前半の方が費用計上額が大きくなる。

④使用権資産とリース負債を計上することによる自己資本比率や総資産利益率(ROA)の低下

⑤自己資本比率の低下による、銀行借入における財務制限条項への抵触の可能性

⑥使用権資産の計上による、潜在的な減損損失の計上対象資産の増加

⑦オペレーティング・リースにより利用してきた動産について、複雑な仕訳を回避するために、リースから購入への切り替えの検討

(2)契約の法形式を問わず、実質的にリースを構成する部分が契約に含まれていると判断した場合には、借手は(1)で述べたような会計処理を行う必要があります。このことから次のような負担が生じてきます。

①役務提供契約等の中に「実質リース」や「隠れリース」が含まれていないかの洗い出し

②上記洗い出しをした上での、利用しているリースのデータ項目の一覧化

③リース料改定などの情報を入手した時点での、タイムリーな使用権資産とリース負債の再測定

(3)借手のリース期間に見積りの要素が大幅に加わりました。つまり、借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間と、借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間が、解約不能期間に加わってリース期間が決定されることになります。

この「合理的に確実」といえるか否かを借手の統制下にある重要な事象又は状況から判断する必要があり、実際に当該オプションを行使する前の時点でリース期間が延長となり、使用権資産とリース負債のタイムリーな再測定をしなければならない場面が生じえます。

このように新リース会計基準の適用対象企業には、業務プロセスの変更やシステム対応といった負担が新たに生じえます。そこで、借手の負担軽減の観点から、1契約当たりのリース料が300万円以下の少額リースについては、貸借対照表への計上を不要とするのみならず原則として契約期間だけでリース期間を判断することができることとし、また、借手のリース期間が1年以内で購入オプションを含まない短期リースについても貸借対照表への計上を不要とすることができるとされました。詳細は、企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」第20項ないし第23項をご覧ください。

リース会計基準の変遷

新リース会計基準が、ASBJから2024年9月に公表され、上場企業及び会社法上の大会社への適用が義務付けられることとなりました。原則的な適用時期は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からですが、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からの早期適用も可能です。

そこで今回はまず、リース会計基準が、これまでどのように変遷してきたかをみます。なお、以下の基準改正の年月は、リース会計基準が公表された時点です。

元来、リース取引は、その法的形式に従い賃貸借取引として処理されてきたため、資産・負債は、リースのどの類型であってもオフバランスでした。

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【1993年6月の基準改正】

リース取引をファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分類し、前者については、その経済的実態に着目し、売買処理を採用しました。

ただし、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、一定の注記を要件として賃貸借処理(以下「例外処理」という。)が例外的に認められました。

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代替的な処理が容認される理由としての本来の姿は、異なった経済的実態に対して、代替的な処理である異なる会計処理を適用することで、事実をより適切に伝えられるようにするためというものです。

しかしながら、大半の企業において、従来どおりの会計処理を行えば済む例外処理の簡便さ故に、所有権移転外ファイナンス・リース取引を賃貸借処理し、経済的実態が異ならないのに代替的な処理を選択するという特異な状況が生じていました。

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【2007年3月の基準改正】

このような特異な状況が生じないよう、例外処理は廃止されました。

これにより当時のIFRS「リース」と平仄が合うことになりました。

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2016年1月にIFRS第16号「リース」が公表され、借手において、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引の区別をしない単一の使用権モデルが採用されました。

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【2024年9月の基準改正】

現行のIFRS「リース」と平仄を合わせる改正がなされ、以下の2点が実現しました。

①使用権を支配する権利は概念フレームワークにおける「資産」の定義を満たすため、借手は使用権資産を計上する。

②使用の有無にかかわらず、リース期間において、借手はリース料の支払い義務を負うため、借手はリース負債を計上する。

このように、今まで賃貸借処理がなされ、貸借対照表上オフバランスだったリースが、貸借対照表上オンバランスされることになりました。

新リース会計基準は、現行のIFRS「リース」の主要な定めのみを取り入れることにより、簡素で利便性が高く、かつ国際的な比較可能性を大きく損なわせないような基準となっています。


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