でんた丸ブログ

財産評価基本通達6項の適用を巡る判決(その2)

前回は、不動産の相続税評価に係る最高裁令和4年4月19日判決をみました。財産評価基本通達(以下「評基通」という。)6項はその適用対象を限定していないところ、非上場株式の相続税評価に関して評基通6項の適用の可否が争われた判決(東京地裁判決令和6年1月18日、東京高裁判決令和6年8月28日のいずれにおいても、国は敗訴し、上告がなされなかったため、国の敗訴が確定しました。)について、前回の判決の事案と比較する形でみてみます。

【最高裁令和4年4月19日判決の事案】

・被相続人は平成24年6月17日に94歳で死亡した。

・同人は、平成21年1月30日付けで、信託銀行から6億3000万円を借り入れた上、同日付けで甲不動産を代金8億3700万円で購入した。

・同人は、平成21年12月21日付けで共同相続人らのうちの1名から4700万円を借り入れ、同月25日付けで信託銀行から3億7800万円を借り入れた上、同日付けで乙不動産を代金5億5000万円で購入した。

♦最高裁判決

被相続人及び共同相続人らは、近い将来発生することが予想される被相続人からの相続において、上記購入・借入れが相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて企画して実行した。

甲・乙不動産の価額について評基通の定める方法による画一的な評価を行うことは、本件購入・借入れのような行為をせず、又はすることのできない他の納税者と共同相続人らとの間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべきである。

 

【今回の判決の事案】

・被相続人が代取の会社(X社)の株式に関して、次のような経緯があった。

①平成26年5月29日、被相続人はX社株式をY社に対し譲渡する基本合意を締結した(譲渡予定価格:1株約10万5千円)。

②被相続人は同年6月11日に死亡した。

③同年7月8日、遺産分割でX社株式を取得した相続人らは、被相続人の妻に全てのX社株式を譲渡した(譲渡価格:1株約10万5千円)。

④同年7月14日、被相続人の妻は、Y社に対しX社の全株式を1株約10万5千円で譲渡した。

⑤平成27年2月27日に、相続人らは評基通180項に基づき類似業種比準価額(1株約8千円)で相続したX社株式を評価し、相続税の申告をしたところ、国は評基通6項を適用し1株約8万円で評価したため、評基通6項の適用の可否が争われました。

♦東京高裁判決

上記①の基本合意は、被相続人の生存中に売買契約が成立した場合、代金債権に転化し、又は代金が支払われることによって、相続税の負担を増大させる可能性を有するものであり、相続税の負担を減じ、又は免れさせるという効果は存しない。

従って、他の納税者との関係で不公平であると判断する余地はない。

結局、今回の判例の事案では、最高裁令和4年4月19日判決の事案におけるような、評基通の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情があるということはできず、評基通の定める方法による画一的な評価額と異なる価額とすることについて合理的な理由があるとはいえない、とされました。

 

このように国が評基通6項を合理的な理由もないのに濫用し適用すると、租税法の一般原則としての平等原則に違反し違法となります。


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