でんた丸ブログ

財産評価基本通達6項の適用を巡る判決(その1)

前回、令和5年9月28日付けの通達をご紹介しました。同通達は、令和5年度与党税制改正大綱(令和4年12月16日決定)を受けたものであるところ、同大綱は、不動産の相続税評価額と市場価格とに大きな乖離がある事案で、財産評価基本通達(以下「評基通」という。)6項の適用が争われ、当該適用が認められた最高裁令和4年4月19日判決の後に、納税者の予見可能性を確保する観点から取りまとめられました。そこで今回は、同判決が示した評基通6項の適用に係る判断枠組みをご紹介いたします。

相続税法22条:相続等により取得した財産の価額は、取得時の時価による。

評基通1項(2):評基通は上記時価の評価方法を定めたものである。

評基通は通達にすぎず、国民に対し直接の法的効力は有しない。

従って、評基通6項に基づく鑑定による評価額(以下「鑑定評価額」という。)が、評基通の定める方法で評価した価額(以下「通達評価額」という。)を上回ったとしても、取得時の時価を上回らない限り、相続税法22条に違反しない。

もっとも、課税庁が評基通に従って画一的に評価を行っていることは公知の事実であるから、特定の者の相続財産の価額についてのみ、課税庁が通達評価額を上回る価額によるものとすることは、合理的な理由がない限り、租税法の一般原則としての平等原則に違反し違法となる。

(「租税法の一般原則としての平等原則」に対する例外)

相続税の課税価格に算入される財産の価額について、通達評価額によることが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、上記合理的な理由があると認められる。

そして、上記合理的な理由があり、租税法の一般原則としての平等原則に違反するということができない場合には、相続税の課税価格に算入される財産の価額を鑑定評価額によることは適法である。

以上が、最高裁令和4年4月19日判決が示した評基通6項の適用に係る判断枠組みです。

この最高裁判決を踏まえ、国税庁は次の3つの基準を総合的に勘案して、「評基通に定めによって評価することが著しく不適当である」と判断した場合に評基通6項を適用するとしています。

①評基通に定められた評価方法以外に、他の合理的な評価方法が存在するか。

②通達評価額と他の合理的な評価方法による評価額との間に著しい乖離が存在するか。

③相続税の課税価格に算入される財産の価額が、たとえ(客観的交換価値としての)時価を上回らないとしても、通達評価額と異なる価額とすることについて合理的な理由があるか。


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