でんた丸ブログ

暦年贈与

今回は、前回の相続時精算課税制度に引き続き、暦年課税とその令和5年度における改正のポイントについて、ご紹介いたします。

1.暦年課税

前回ご紹介した相続時精算課税制度と同様に、暦年課税においても年110万円の基礎控除があるため、年110万円以下の生前贈与を長期間継続することにより、無税で多額の財産を移転できます。

(注1)

例えば「1100万円を10年間にわたり110万円ずつ贈与する」という内容の贈与契約を締結した場合には、毎年の贈与金額が110万円以下であったとしても、当該贈与契約の締結を行った年に「定期金に関する権利」の贈与を受けたとして、1100万円に対して贈与税が課されます。

従って、予め「1100万円を10年間にわたり110万円ずつ贈与する」という意思がある場合には、税務調査の際に「定期贈与(毎年一定の金額を贈与することが決まっている贈与)」とみなされ、1100万円に対して贈与税が課されることがあるのでご注意ください。

(注2)

相続時精算課税に係る贈与税の基礎控除(相続税法21条の11の2第1項)は、従来からの暦年課税に係る贈与税の基礎控除(相続税法21条の5)とは別のものという位置づけになっています。それ故、これら2つの基礎控除を共に適用する(相続時精算課税選択届出書に係る贈与者以外の者からの贈与がある場合に可能となります。)ことにより、年間で220万円までの贈与について贈与税が課されないことになります。

2.令和5年度の改正のポイント

(1) 相続開始前に贈与があった場合の相続税の課税価格への加算対象期間が、以下のように今後段階的に延長されていきます(相続税法19条1項)。

【相続開始日】                                 【対象期間】

①2024年1月1日~2026年12月31日 →   相続開始前3年間

②2027年1月1日~2030年12月31日 →   2024年1月1日~相続開始日

③2031年1月1日~         →   相続開始前7年間

(2) 相続開始前に贈与があった場合の相続税への加算額

今般の改正により延長された期間、つまり相続開始前3年超7年以内に贈与を受けた財産の価額については、相続税の申告の際に確認すべき生前贈与の記録及び管理に要する事務負担を軽減する趣旨から、相続人等ごとにそれぞれ総額100万円までの範囲で、相続税の課税価格に加算しないこととされました(相続税法19条1項、他に相続税法基本通達19-1、19-6なお書きも参照)。

(参考)

上記(1)の加算対象期間の長さについては、下記の諸外国の例を参考にしつつも、(2)で述べた納税者における生前贈与の記録及び管理に要する事務負担をも考慮して決定されました。

米国       : 一生涯

フランス   : 相続開始前15年間

ドイツ    : 相続開始前10年間


このページのトップへ