でんた丸ブログ
契約にリースが含まれているか否か(その6)
今回は、契約にリースが含まれているか否かを具体例を通して判定する最終回です。
前回に引き続き、適用指針第8項(1)又は(2)が満たされて、顧客が「資産の使用を指図する権利を有する場合(適用指針第5項(2)参照)に当たるか否かを検討します。
【具体例①:使用方法が契約で定められており、顧客が資産の使用を指図する権利を有していないケース】
1.顧客A社は、サプライヤーB社と、B社が所有する発電所が産出する電力のすべてを3年間にわたり購入する契約を締結した。
2.B社は、業界において認められた事業慣行に従い、日々当該発電所を稼働し、維持管理を行う。
3.契約において、使用期間全体を通じた当該発電所の使用方法(産出する電力の量及び時期)が定められており、契約上、緊急の状況などの特別な状況がなければ使用方法を変更することはできないことも定められている。
4.A社は当該発電所の設計に関与していない。
5.当該発電所は、特定された資産である。すなわち、適用指針第6項(1)又は(2)が満たされていない。
当該発電所の使用方法は契約で事前に定められているところ、A社は使用期間全体を通じて当該発電所を稼働する権利も有していないし(適用指針第8項(2)①参照)、当該発電所の設計もしていない(同項(2)②参照)。
よって、顧客は資産の使用を指図する権利を有しておらず、契約にリースが含まれていないと判断されます。
【具体例②:使用方法が契約で定められており、顧客が資産の使用を指図する権利を有しているケース】
具体例①の3.の部分を次のように変えると、適用指針第8項(1)を満たし、また他の要件も満たされているため、契約にリースが含まれていると判断されます。すなわち、
・顧客A社が当該発電所の使用方法(産出する電力の量及び時期)を決定する権利を有していることが契約で定められている。また、サプライヤーB社が他の契約を履行するために当該発電所を使用することができないことも契約で定められている。
【具体例③:使用方法が設計によって事前に決定されており、顧客が資産の使用を指図する権利を有しているケース】
1.顧客A社は、サプライヤーB社と、B社が新設する太陽光ファームが産出する電力のすべてを20年間にわたり購入する契約を締結した。
2.A社は、当該太陽光ファームを設計した。
3.B社は、A社の仕様に合わせて当該太陽光ファームを建設し、建設後に当該太陽光ファームの稼働及び維持管理を行う責任を有している。
4.当該太陽光ファームの使用方法(電力を産出するかどうか、いつ、どのくらい産出するか。)は、当該太陽光ファームの設計により決定されている。
5.当該太陽光ファームは、特定された資産である。すなわち、適用指針第6項(1)又は(2)が満たされていない。
上記2ないし4によれば、適用指針第8項(2)が満たされ、また他の要件も満たされているため、契約にリースが含まれていると判断されます。