でんた丸ブログ
君たちはどう生きるか (1)
以前、AIにない人間の特徴として倫理観の存在を一例として挙げました。倫理とは、生き方の中で中心にあるもので、モラルとも言います。ここからは、この倫理について『君たちはどう生きるか』(以下、「本」といいます。)という吉野源三郎の著作を題材に考えていきたいと思います。ちなみに、この本と同名の、宮崎駿監督によるアニメ映画が昨年公開されました。宮崎駿監督は、少年時代にこの本を何度も繰り返し読み、感銘を受けたため、自分なりのメッセージをこの度、世に伝えたいと思い、『君たちはどう生きるか』という映画を作ったそうです。
本の内容は、中学一年生のコペル君が、その母親の弟で大学を出たての叔父さんに自分の体験を語り、叔父さんが自分のノートに当該体験に対するコメントを書き留めるという形で進められていきます。大銀行の重役であるコペル君の父親は、亡くなる前に、妻の弟である「叔父さん」にコペル君が人間として立派に育つことを託しました。そこで、叔父さんは、自分のノートに書き留めた内容をいつかコペル君が読むだろうと期待して、コメントを書いています(実際、コペル君が中学二年生になることとなった春休みに、叔父さんは、そのノートをコペル君に読むように手渡しました)。
本の第1章は、「へんな経験」という題名です。コペル君は中学一年生のときに、人間一人一人を客観視して世の中の一分子として捉える見方に気づくという「へんな経験」をしました。今までは自分を中心に据えて人間社会を観察していたのですが、「へんな経験」をしてからは人間を抽象化して、ある一定のルール・秩序の下に動く一人一人の人間としてみることができるようになりました。