でんた丸ブログ
共同相続人の連帯納付義務(法改正の変遷の一例として)
共同相続人は、自らが負担すべき固有の相続税の納税義務について確定すると、法律上当然に、連帯納付義務も確定し特別の責任を負うことになります(相続税法34条1項)。この相続税法34条という条文は、今では1項に本文と但書があり、しかも8項まで規定が整備されていますが、平成23年(2011年)6月の改正までは1項に但書はなく、また5項から8項までの規定もありませんでした。どのような問題意識から条文が見直されるのかをみるため、今回は相続税法34条を取り上げます。
1.平成23年6月改正に至るまでの問題意識
共同相続人として当然に負担することになる連帯納付義務につき、連帯納付義務者に対して納税の告知がないまま徴税がなされ、当該連帯納付義務者からすると不意打ちであり困惑してしまうという問題が生じていました(確定した租税に係る徴収手続上の問題点)。
2.平成23年6月改正
上記1.の問題に対処し、連帯納付義務者のために適正手続を保障する観点から、平成23年6月に相続税法が改正され、34条に5項から8項までの規定が創設されました。
3.平成24年3月改正
相続開始から長期間が経過したにもかかわらず、突然、連帯納付義務者に対して連帯納付義務の追及がなされると、当該連帯納付義務者の法的安定性が著しく害されます。そこで、平成24年3月改正で、34条1項に但書が新たに加わり、連帯納付義務者の連帯納付義務が解除される3つの場合に係る規定(1号ないし3号)が創設されました。
なお、1号から3号の内容を簡潔にまとめると次のようになります。
1号:本来の納税義務者の相続税の申告期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内)から5年が経 過する日までに、税務署長から連帯納付義務者に対し納付通知書による通知がなかった場合
2号:本来の納税義務者が「延納の許可」を受けた場合
3号:本来の納税義務者に「納税の猶予」がなされた場合