でんた丸ブログ

過年度売上金の横領が当期に発覚した際の、消費税の取扱い

過年度売上金の横領が当期に発覚した際に、消費税はどのように処理すればよいでしょうか。

この点、過年度売上に係る現預金を横領された際に、横領された会社が既に売上を適正に計上していたか否かで場合分けします。

①  横領された会社が既に過年度に適正に売上を計上していた場合

この場合に既に消費税を適正に納付しているときには、修正申告の必要はありません。

もっとも、現預金の当該横領を隠蔽するために経費を架空計上していたなど、消費税を適正に納付していなかった場合には、修正申告をする必要があります

②  横領された会社において当該横領の発覚が遅れたため、過年度に売上を過少計上していた場合

この場合には、当該横領により会社が認識できなかった売上に対応する消費税分につき、修正申告により納付する必要があります。

なお、上記②の場合には、その遡って修正した課税期間の課税売上割合を再計算する必要もあるので、ご注意ください。

法人が支払を受ける損害賠償金に係る損害賠償請求権の益金算入時期

上場会社等100社のうち約1社は会計不正(粉飾決算と資産の流用)がなされており、その会計不正の内訳は、粉飾決算が8割、資産の流用が2割です。このように法人が横領(資産の流用)等の不法行為の被害を受けることはままあるところ、法人が例えば横領により損害を受けた場合、私法上は、その損害の発生と同時に損害賠償請求権が発生することになります。また、簿記の仕訳上も不法行為による損失と損害賠償請求権が両建て計上されます。では、法人税法上、当該損害賠償請求権をいつ益金算入することができるのでしょうか。私法上、観念的・抽象的に損害賠償請求権が発生したといっても、当該権利の相手方、金額などが明らかにならなければ権利行使ができず回収もできません。

法人税法では益金の認識基準として一般に実現主義や権利確定基準が採用されている(同法22条4項の公正処理基準が根拠とされています。)ため、実現主義や権利確定基準に基づき、益金の算入時期を判断します。そして、当該損害賠償請求権が「実現」や「確定」したといえるためには、その相手方、金額その他権利の内容及び範囲が確定している必要があり、「実現」や「確定」をしたといえる時期に益金算入されることになります。なお、損害賠償請求権に係る回収可能性の問題は、貸倒損失の計上や貸倒引当金の設定に関わる問題であり、今回の益金算入時期には影響しません。

法人税基本通達2-1-43では損害賠償請求の相手方が法人の役員又は使用人以外の「他の者」である場合の損害賠償請求権の益金算入時期について定めていますが、相手方が法人の役員や使用人の場合には、同通達では明らかではありません。学説としては、同時両建説や異時両建説があり、これら学説の内容を考慮すると、当該損害賠償請求権が「実現」や「確定」したといえるタイミングで益金計上されるものと整理されます。

「誤謬」を巡る会計処理と監査の違い

一般的な意味としては、「誤謬」は「あやまり」を意味し、「不正」は「正義でないこと」を意味しますが、会計上の「誤謬」は、企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」4項(8)により以下のとおり明確に定義されています。

「誤謬」とは、原因となる行為が意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、又はこれを誤用したことによる、次のような誤りをいう。

①財務諸表の基礎となるデータの収集又は処理上の誤り

②事実の見落としや誤解から生じる会計上の見積りの誤り

③会計方針の適用の誤り又は表示方法の誤り

例えば、従業員による資産の流用という不正から生じた財務諸表の虚偽表示であっても、会計上は「誤謬」に該当します。

一方、会計監査では、「誤謬」は「不正」と対比して用いられ、財務諸表の虚偽表示は、不正又は誤謬から生じる(監査基準報告書240「財務諸表監査における不正」2項前段)とされています。

そして、不正と誤謬は、財務諸表の虚偽表示の原因となる行為が、意図的であるか否かにより区別されます(同項後段)。従って、上述の会計処理の話とは異なり、従業員による資産の流用という不正から生じた財務諸表の虚偽表示は、監査人の立場からは、誤謬から生じた財務諸表の虚偽表示とは区別して取り扱われます。

前期損益修正の税務上の取扱い

前期損益修正自体は企業会計原則第二の六で認められています。そこで、前期損益修正益を会計上計上する場合に、税務上は、修正申告すべきでしょうか。また、前期損益修正損を会計上計上する場合に、税務上は、更正の請求をすべきでしょうか。この点については、当該前期損益修正という会計処理が税務上、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」(いわゆる「公正処理基準」、法人税法22条4項)に該当するか、と言い換えることができます。

ここでは、東京地判平成27年9月25日税資(税務訴訟資料)265号順号12725[過年度外注費当期損金算入事件]と東京地判平成25年10月30日判時2223号3頁[TFK事件](控訴審:東京高判平成26年4月23日訟月(訟務月報)60巻12号2655頁)という2つの裁判例を整合的に理解するために有効な次の基準を、私見ですがご紹介します。

すなわち、①当初の取引時に納税者が分かり得たにもかかわらず前期損益修正の会計処理をした場合には、公平な所得計算を実現し納税者の恣意を排除するという法人税法独自の観点からして、修正申告又は更正の請求をすべきとされます。

②一方で、納税者が当初の取引時には分かりえなかった収益や原価・費用・損失の存在が後になって判明したという場合には、益金又は損金の計上時期に関し納税者の恣意は問題とならないため、それが判明した事業年度の益金又は損金とするのが相当であり、過年度に遡って修正すべきではないとされます。

なお、法人税法上、修正申告や更正の制度(更正の請求の制度を含む。)があることに鑑みて、後に修正すべきことが発覚した場合には、過去の事業年度に遡って修正することが予定されており、原則は修正申告や更正の制度(更正の請求の制度を含む。)を利用することになります(更正の請求については、「更正の請求の原則的排他性」と呼ばれています)。

(参考)

過年度外注費当期損金算入事件の事実の概要:納税者が過年度の外注費の計上漏れに気づき、当期に前期損益修正損を計上したところ、所轄税務署長から法人税・消費税の更正処分を受けた。

TFK事件の事実の概要:会社更生法の適用を受けた貸金業を営む消費者金融会社が、過払金返還請求権が更生債権として確定したことを受けて、かつて受領した制限超過利息等に対して納付した過年度の法人税額について、後発的理由による更正の請求(国税通則法23条2項1号)をしたところ、所轄税務署長から、更正すべき理由がない旨の通知処分を受け、還付が認められなかった。

上記2つの事件において、各納税者は当該処分の適法性を裁判で争いましたが敗訴しました。

契約にリースが含まれているか否か(その6)

今回は、契約にリースが含まれているか否かを具体例を通して判定する最終回です。

前回に引き続き、適用指針第8項(1)又は(2)が満たされて、顧客が「資産の使用を指図する権利を有する場合(適用指針第5項(2)参照)に当たるか否かを検討します。

【具体例①:使用方法が契約で定められており、顧客が資産の使用を指図する権利を有していないケース】

1.顧客A社は、サプライヤーB社と、B社が所有する発電所が産出する電力のすべてを3年間にわたり購入する契約を締結した。

2.B社は、業界において認められた事業慣行に従い、日々当該発電所を稼働し、維持管理を行う。

3.契約において、使用期間全体を通じた当該発電所の使用方法(産出する電力の量及び時期)が定められており、契約上、緊急の状況などの特別な状況がなければ使用方法を変更することはできないことも定められている。

4.A社は当該発電所の設計に関与していない。

5.当該発電所は、特定された資産である。すなわち、適用指針第6項(1)又は(2)が満たされていない。

当該発電所の使用方法は契約で事前に定められているところ、A社は使用期間全体を通じて当該発電所を稼働する権利も有していないし(適用指針第8項(2)①参照)、当該発電所の設計もしていない(同項(2)②参照)。

よって、顧客は資産の使用を指図する権利を有しておらず、契約にリースが含まれていないと判断されます。

【具体例②:使用方法が契約で定められており、顧客が資産の使用を指図する権利を有しているケース】

具体例①の3.の部分を次のように変えると、適用指針第8項(1)を満たし、また他の要件も満たされているため、契約にリースが含まれていると判断されます。すなわち、

・顧客A社が当該発電所の使用方法(産出する電力の量及び時期)を決定する権利を有していることが契約で定められている。また、サプライヤーB社が他の契約を履行するために当該発電所を使用することができないことも契約で定められている。

【具体例③:使用方法が設計によって事前に決定されており、顧客が資産の使用を指図する権利を有しているケース】

1.顧客A社は、サプライヤーB社と、B社が新設する太陽光ファームが産出する電力のすべてを20年間にわたり購入する契約を締結した。

2.A社は、当該太陽光ファームを設計した。

3.B社は、A社の仕様に合わせて当該太陽光ファームを建設し、建設後に当該太陽光ファームの稼働及び維持管理を行う責任を有している。

4.当該太陽光ファームの使用方法(電力を産出するかどうか、いつ、どのくらい産出するか。)は、当該太陽光ファームの設計により決定されている。

5.当該太陽光ファームは、特定された資産である。すなわち、適用指針第6項(1)又は(2)が満たされていない。

上記2ないし4によれば、適用指針第8項(2)が満たされ、また他の要件も満たされているため、契約にリースが含まれていると判断されます。

 

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