でんた丸ブログ
代償分割が行われた場合における課税価格の計算
遺産分割協議がなかなかまとまらず、相続開始時から大分時間が経過してから遺産分割協議がまとまるというケースがあります。このようなケースで遺産分割の方法として代償分割が選択された場合、代償債務の額が遺産分割時点の相続財産の時価を基に決定されるときがあり得ます。そこで今回は、このとき課税価格をどのように計算すべきか、について取り上げます(相続税法基本通達11の2-9・11の2-10及びタックスアンサーNo.4173参照)。
1.相続税の課税価格の計算
【代償財産の交付をした人の課税価格】
相続または遺贈により取得した現物の財産の価額から、交付をした代償財産の価額を控除した金額
【代償財産の交付を受けた人の課税価格】
相続または遺贈により取得した現物の財産の価額と、交付を受けた代償財産の価額との合計額
※代償債務を負担した人が、代償財産の交付をすることになり、当該交付をすれば、代償財産の交付をした人になります。
では、次に、この「代償財産の価額」とは何をいうのかを見ていきます。
2.代償財産の価額
「代償財産の価額」は、「代償債務の額」の相続開始の時における金額によることになります。
ただし、次に掲げる場合に該当するときは、当該「代償財産の価額」は、それぞれ次に掲げるところによるものとされます。
(1) 共同相続人及び包括受遺者の全員の協議に基づいて、代償財産の額を次の(2)に掲げる算式に準じて又は合理的と認められる方法によって計算して申告があった場合:当該申告があった金額
(2) (1)以外の場合で、代償債務の額が、代償分割の対象となった財産が特定され、かつ、当該財産の代償分割の時における時価を基として決定されているとき:次の算式により計算した金額
代償債務の額
×(代償分割の対象となった財産の相続税評価額
÷代償債務の額の決定の基となった代償分割の対象となった財産の、代償分割の時における価額)
※代償債務の額は、代償債務の額面金額のことで、「代償債務の価額」と一致するとは限りません。相続開始の時と、その後、遺産分割協議により代償分割が選択され実際に代償分割により遺産の分割がなされる時とは時点が異なるからです。
3.具体例
遺産の分割に当たって、共同相続人甲・乙のうち甲に相続により土地を取得させる代わりに、甲は乙に現金2,000万円を支払うことになりました。ここで、代償分割の対象となった財産である土地の相続税評価額4,000万円が、代償分割時には時価5,000万円に値上がりしたとします。なお、単純化のため、ここでは相続財産は当該土地しかないものと仮定します。
① 乙に支払うこととなった現金2,000万円(これが、代償財産となります。)という額が、「代償債務の額」の相続開始の時における金額として定められている場合
・甲の課税価格:4,000万円-2,000万円=2,000万円
・乙の課税価格:2,000万円
② 乙に支払うこととなった現金2,000万円(これが、代償財産となります。)という額が、相続財産である土地の代償分割時の時価5,000万円を基に決定された場合
・甲の課税価格:4,000万円-{2,000万円×(4,000万円÷5,000万円)}=2,400万円
・乙の課税価格:2,000万円×(4,000万円÷5,000万円)=1,600万円